2011年3月アーカイブ

324日の卒業式の後、卒業生が企画主催した夜の「謝恩会」に出席したところ、ゼミ生一人ひとりから思わぬプレゼントがありました。花束と記念品はもとよりですが、それ以上に手紙という形の彼女らの気持ちを会場で朗読された時は、不覚にも感極まってしまいました。それこそ教師冥利に尽きるひと時でした。今回掲載する卒論は、卒業式後に送られてきたものです。彼女は地元の病院に就職が決まって、すでに研修が始まっているとのこと、いよいよ社会人として第一歩を歩み始めたようです。彼女の卒論は、就職氷河期のこの時代にふさわしいテーマなので、学生だけでなく、教職員からも関心を集めておりました。ただ、残念なことに、データ数が少ないため、提示された結果を鵜呑みにするわけにはいきません。このテーマが後輩に引き継がれることを期待することにします。

 

権田 麻衣

 

要旨

 

現在、世界的不況の中で学生は就職難に見舞われている。じっさいに就職内定率は平成8年度の調査開始以来最低の水準となっている。このような状況の中一人で就職活動を続けることは難しく、周囲への相談が必要だと考えられる。そこで、就職活動を終えた女子大生の4年生8名を対象に「どのように就職活動を始めましたか。」「転職についてどう考えていますか。」「結婚や出産の時、仕事はどうしたいと考えていますか。」という質問をもとに30分程度の半構造化面接を行った。面接中の会話を録音し、逐語録を作った。逐語録から主な相談相手には友人、大学のキャリアアドバイザー、家族があげられた。友人に相談する目的は愚痴の言い合いを通した情報交換である。キャリアアドバイザーに相談する目的は、厳しいことを言われ学生の考えの甘さをなくすという点で面接の練習になると考えられる。また、家族に相談するのは、話を聞き励ましてもらい、社会人としての視点からのアドバイスを得るという目的があると考えられる。

このように相談相手によって相談内容に差が出る理由として、3点考えられる。

1つ目が年齢の差である。就活をしている友人は同じ年ぐらいであり、経験していることも相談する側とされる側で大きな差はない。しかし、キャリアアドバイザーや親は年齢がかなり上になる。そのため、相談する側より経験してきたことも多く、経験に基づいたアドバイスをすることができる。

 2つ目が相談相手の知識の量である。キャリアアドバイザーは就職に関しての知識が非常に豊富である。親も社会人として子どもである学生とは知識の量に差があるだろう。友人同士の場合は、同じ時期に似た経験をしているので互いに新鮮な知識を得ることができる。

 3つ目がそれぞれ得意とする分野が違うということである。キャリアアドバイザーは様々な学生を指導してきた経験がある。学生が初めて接する厳しい社会人として、社会の厳しさを教える役割が得意であると考えられる。友人は、同じ目標を持つ仲間でありライバルとして同じ立場で物事を考えるのが得意であるだろう。親は、社会人としての先輩ではあるものの、家族であり情があるので、厳しい言葉をかけることよりもあたたかい言葉で励ますほうが得意であるだろう。

 以上の3つの理由から相談する内容は、相談相手によって違いがあると考えられる。そして、相談内容が異なるのでそれぞれから受ける影響も異なると考えられる。友人ならば同じ就活生としての影響を、キャリアアドバイザーなら社会の厳しさを、家族からは励ましという影響をうけると考えられる。

 

 

このたびの大震災は、震災地では多数の犠牲者を出しており、改めてお悔やみ申し上げます。きょうはおそらく全国の国立大学では卒業式が行われると思いますが、奈良女子大学でも卒業式が開催されることになっています。前回に引き続いて、卒業生のなかでメールにて要旨を送ってくれた学生の卒論を本欄にて紹介します。

 

 非日常空間と日常空間におけるエピソード想起についての比較研究

 

 辻 真美子

 

問題と目的

 

内観とは、自分の心の内面を観察しながら、自分について調べていく手法を言う。吉本伊信によって開発された内観療法は、日常的刺激から遮断された特殊な空間で、洗面、食事、睡眠等を除き一日15時間もの間内観の作業に没頭しそれを一週間続けるというもので、日本の代表的な心理療法として近年臨床的な事例の積み重ねからその効力が検討されている。内観はサイコセラピー(心理療法・精神療法)を目的としたものだけではなく、精神修養法としての利用も認められ、少年刑務所や、教育の現場でも、教室での集団内観などの実例が報告されている。

だが、このような内観は内観時間の短さに加えて、日常空間において行われるという点において、集中内観とは大いに異なっている。集中内観は、畳の、静かな和室において、襖によって視覚刺激を遮断された状況で行われる。この環境要因が内観に及ぼす影響が、どの程度大きいものなのかは、未だ明らかにされていない。

そこで今回は、日常空間、および非日常空間で行われるエピソード想起とその内容を比較し、環境要因が想起に与える影響がどのようなものかということを主題に置いて研究を行った。

方法

調査対象 奈良女子大学学生6名(19歳~22歳)

実験期間 201011月下旬

手順 日常空間、非日常空間の二つの環境を設定し、約一週間程度の日を分けて同一被験者に各々の環境でエピソード想起を行ってもらい、データを収集した。また、想起内容は比較のしやすさと内観の手順を意識し、両親に関する記憶に絞ってもらうよう教示した。

 

実験Ⅰ(日常空間での想起

場所:奈良女子大学N233実験室

普段使っている暇つぶしの道具を用いて、1時間自由に過ごしてもらい、その後30分のエピソード想起を行った。

実験Ⅱ(非日常空間での想起)

場所:大和内観研修所

特殊な空間を設置し、そこでの一時間の瞑想の後、30分間のエピソード想起を行い、データを収集した。

結果

 内容を分析した結果、想起時の環境によって想起内容が変わるか、という視点から見ると、個人差はあるものの、大まかに以下のような変化が見られた。

・非日常空間では「落ち着かない」「明るい場所へ出たくなった」など、非日常空間にいること自体に抵抗を覚えたという意見があったこと。

・非日常空間においてはマイナスイメージのエピソードが増える傾向があったこと。

・非日常空間では、エピソードの内容が詳細になり、より主観的な視点で語られるようになったこと。

考察

非日常空間において「落ち着かない」「明るい場所へ出たくなった」といった意見が述べられた。これは屏風により区切られた非日常空間そのものに抵抗を覚えた結果と言えるだろう。集中内観の現場でも、屏風に区切られた空間に一分もいないうちに抵抗感を覚えたという例が紹介されている(真栄城,2005)。本研究の事例では、集中内観における抵抗と少し通じる所があった。本研究は短時間かつ簡易的に行った実験であるため、集中内観ほど激しい抵抗というわけではないが、集中内観で設定されている非日常空間にとりかかる際、こういった抵抗を持つ人もいるという事例としてここにあげておく。

また、非日常空間においてはマイナスイメージのエピソードが増え、自然と暗い過去を思い出すといった現象が見られた。自伝的記憶において、人生条件の下では不快エピソードが想起されやすいという点はすでに指摘されている(北村,2010)ため、想起の中で、マイナスイメージのエピソードが多く語られること自体は不自然ではない。だが、非日常空間において、よりこの傾向が顕著になったという点は興味深い。これは、非日常空間においてはより主観的な視点に立ちやすいという効果が表れた結果ではないだろうか。

本研究のデータからは、非日常空間ではエピソードの内容が詳細になり、より主観的な視点で語られるようになることがうかがえた。これらは、この非日常空間での体験が、各人の内側へ向かうエネルギーを増幅させた結果、引き起こされたのではないかと思われる。個人差はあるが、非日常空間における体験は、各人の内側へ向かうエネルギーを増大させる傾向があるため、結果として過去を想起する際に主観的な視点から振り返ることができるようになる。こういった作用は、内観を深める助けにもなるだろう。

 

 

大学もいよいよ来週の24日は卒業式が行われます。今年は、ゼミ生はもとよりですが、4回生全員が無事に卒業できることになりました。

新4回生、つまり、現3回生の中には気が早い学生がいて、「××のテーマで卒論を書きたいのですが、 似たようなテーマで卒論を書いた先輩はいませんか?」などと聞かれることがあります。そこで、後輩のために、4回生にメールで要旨を送ってもらいました。掲載を了承してくれたゼミ生の卒論要旨を本欄に掲載しておきます。掲載の順番は、到着順です。

 

集中内観前後における認知の変化の検討

~インタビューと家族画を通して~

辻田奈保子

 

要旨

 内観法によって認知の変化が起こるという事は,多くの先行研究で述べられてきた。しかし,その多くは心的変化の一つとして言及していたり,あるいは調査用紙での回答を基に研究を行っていたり等と,認知の変化について詳しく検討した研究は少ない。そもそも内観法で得られる心的変化とは,内観法を受ければ自然と発生するものではなく,認知の変化により今までの生き方を新たに捉えなおすことで初めて得られるものであると考えられる。したがって,認知の変化に焦点を絞った研究は,内観法の効果研究の主軸となるとも言えよう。

本研究は認知の変化に焦点を当てた内観法の効果研究であり,認知の変化の有無と,その結果に至った要因を明らかにすることを目的としている。内観法が「相手の立場に立つ」ということに重点を置いていることから,今回は他者への認知を中心に検討した。方法については,変化の様子を把握しやすく,その場に応じて必要な情報を獲得しやすいインタビューを用いた。それと並行して,発話に支障のある協力者を配慮して,描画テストを行った。協力者は集中内観者によって構成される調査群男女8名(平均年齢29.9歳,SD7.3),及び内観者との比較対象である,内観未経験者の統制群男女8名(平均年齢30.0歳,SD6.6)であった。

結果であるが,調査群では6名に認知の変化が認められ,統制群については1名にしか認められず,内観法を受けた方が認知に変化が生じやすいことが示唆された。本研究での認知の変化をもたらした要因としては,①内観面接者の存在,②カタルシス,③内観課題,④夢の4つを抽出することができた。

 

山にかこまれた のどかな村がありました。

ここには、やさしい和尚さんのいるお寺があります。

いつもお寺のお堂には、村の人からの野菜やくだもののお供え物が届きます。

 

ある年、山にえさがなくなった動物たちが、おなかをすかせ、

お寺のお供え物を食べに来ました。

和尚さんは、動物たちが、村の人たちに悪さをするより、

ここのお供え物を食べて、元気になってくれればいいよ、とそっと見守っていました。

 

母たぬき「ぽん太、そこで待っていなさい。今、おいしいくだものをもらってくるからね」

さっとお供え物を取ると、母たぬきはりんごをぽん太に渡しました。

ぽん太「うわー、おいしそうなりんごだね。ここのお寺には、いつでもごちそうがあるんだね」

母たぬき「でも、人間に捕まっちゃうと、もう山には帰れなくなるかもしれないのよ。とっても危険だからきをつけてね。」

ぽん太「ふーん、そっか。人間は怖いの?」

母たぬき「そう。ぽん太が生まれてすぐ、山の反対側の村でお父さんは人間につかまったの。きっと食べられちゃったんだと思うわ。でも、今は山に食べ物がないから、こうしてこっそりもらっているのよ。」

ぽん太「怒られないの?」

母たぬき「そうなのよねー。和尚さんは気がついているはずなんだけど、ワナもないし・・・でも、気をつけてね。」

 

やさしい和尚さんは、たぬきの親子の様子を、こっそり見て

和尚さん「わしゃ、おまえたちを取って食ったりしないから、安心しておくれ」

と、ほほえみながらつぶやいていました。

 

ある日、和尚さんは山でお母さんぐまとはぐれ、お腹をすかして倒れている子ぐまをみつけ、お寺につれて帰りました。

和尚さんは、子ぐまが元気になるまで、おいしいものを食べさせ、かわいがって育てました。

 

和尚さん「くまきちよ、もうすっかり元気になったな。山にかえって、お母さんをさがすんだよ。おなかがすいて、倒れそうになったら、またここに来ればいいから。」

くまきち「おしょうさん、ありがとう。もし、おしょうさんが困ったことがあったら、今度はぼくが助けるからね。」

 

くまきちは、和尚さんにスリスリっとして甘えてから、山に帰っていきました。

くまきちがおしょうさんに助けられたことは、山の動物たちにひろまって、やさしい和尚さんは、こっそりお供え物を持って行っても、捕まえたり、おこったりしないってことがわかってきました。

 

少し大きくなったぽん太は、自分でえさをとるようになりましたが、この日は何もみつけることができませんでした。

ぽん太「そうだ、お寺のお供え物をもらいにいこう。和尚さんは、怖くないっていうし。」

 

お寺のお堂には、野菜や果物の他にも、ぼたもちや、お酒などいろんなものが供えられます。

この日は、先に来た動物たちが持って行った後で、残っていたのは小さなおいもが一つとお酒だけでした。ぽん太は、おいもだけでは足りなくて、そこにあったお酒ももらっていくことにしました。

 

ぽん太「なんだろう、このお水のようなものは」

ぽん太は今までお酒をみたことがありません。

ぽん太「とびっきりおいしいお水かな?」

家の近くまで帰ってきたぽん太は、のどがかわいていたので、お酒を飲んでみることにしました。

ぽん太「あれれ、お腹が熱くなってきたぞ。ちょっと寒いと思ったところだし、よーし、これを飲んだらあったかくなるかも。」

さあ大変、ぽん太はお酒を全部飲んでしまいました。

ぽん太「うわー、目が回る。気持ちが悪いよぉ」

そう言うと、ぽん太は、バタンと倒れてしまいました。

 

ぽん太の帰りが遅いので、心配になった母たぬきは、家の周りをさがしていました。

すると道ばたでぽん太が倒れているではありませんか。

母たぬき「ぽん太!ぽん太!」

ぽん太の口からはお酒のにおいがプンプンしますが、母たぬきもお酒がなんなのか知りませんでした。

母たぬき「ひょっとして、お寺のお供え物を飲んだのね。きっと毒だわ。和尚さんに毒を飲まされたに違いない。ぽん太!目をさまして!ぽん太!」

母たぬきがいくら呼んでも、ぽん太は目をさましませんでした。

 

そのころ、お寺では、和尚さんがあわてていました。

お酒をお供えしたよ、と村人に聞いた和尚さんは、動物たちが飲んでしまわないように、と、急いで取りに行きましたが、一足先にお酒を持って走って山に逃げていく行くぽん

太の後ろ姿を見ました。

和尚さん「困ったなー、ぽん太がお酒を飲んだら、困ったことになるぞ・・・そうだ、くまきちに頼んでみるか」

和尚さんは、そういうと山に向かって

和尚さん「くまきちやーい、くまきちやーい」

と大きな声で呼びました。しばらくすると、くまきちがあらわれました。

和尚さん「くまきち、たのまれておくれ。ぽん太をさがして欲しいんじゃ。お酒を持って行ってしまったんじゃ。ぽん太はまだまだ子どもだ。へたすると、死んでしまうこともあるんだよ。飲んじゃダメだって、お酒を取り上げてくれ。急いでな。」

 

くまきちは山に入ってぽん太をさがしました。大きな声でぽん太を呼ぶ母たぬきの声で、すぐにぽん太をみつけることができましたが、すでにお酒を飲んだ後でした。

くまきち「ぽん太、お酒を飲んじゃったの?」

母たぬき「お酒?毒でしょ?どうやら和尚さんのワナに違いないわ。毒を飲ませるなんてなんてひどい。やさしいなんて、やっぱりウソよ。あぁ、どうしましょう。このままこの子が目をさまさなかったら。ぽんたー」

くまきち「和尚さんが毒を?絶対ちがうよ。和尚さんは、やさしいんだ。ワナなんてしかけたりしない。ぼくたち動物の身方だよ。」

お世話になった和尚さんのことを、悪く言われるのがとても悔しかったくまきちは、

くまきち「僕が責任持ってぽん太を助けるから、背中にぽん太を乗せてくれ」

母たぬき「たしかにこのままじゃ、ぽん太は死んでしまうかもしれないわね。本当に、助けてくれるのね。」

そういうと、ぽん太をくまきちの背中に乗せました。

くまきち「心配なら、いっしょにお寺にきて。和尚さんはやさしいから」

そういうと、ぽん太を背中に乗せてお寺に向かって走りました。

 

和尚さんは、ぽん太がお酒を飲んでしまったときのことを考えて、お寺にお医者さんを呼んで待っていました。

 

くまきちに運ばれたぽん太は、どんなに呼んでも、返事がなく、目をさましません。

和尚さん「ぽん太、大丈夫かい?まさかこんなことになるとは。」

おいしゃさん「とにかく早く処置をしないと。わしにまかせてくれ」

くまきちと母たぬきは心配そうな顔で、見守っています。

 

和尚さん「くまきち、運んでくれてありがとな。ぽん太が飲んだのは、お酒というんじゃ」

母たぬき「毒でしょ。ぽん太は、毒がまわってこんなことになってしまったんでしょ」

和尚さん「わしら、大人にとっては、飲み過ぎなければこわいものじゃない。わしも時々村の人と一緒に楽しく飲んどるんじゃ。ところが、子どもにとっては、確かに毒といっしょなんじゃ」

まだ、和尚さんを信じていない母さんたぬきに、くまきちは言いました。

くまきち「ぽん太がお酒をのんじゃまずいって、和尚さんは心配してたんだよ。ぽん太からお酒を取り上げてくれって。それでおいらは、ぽん太を探していたんだ。でも、間に合わなくて・・・」

母たぬき「そう、そうだったの。和尚さん、ぽん太は、死んじゃうの?」

和尚さん「いや、きっと助かるさ。くまきちのおかげで、すぐにおいしゃさんに診てもらえたし。」

母たぬき「でも、和尚さんは飲んでいるのに、どうしてぽん太は、倒れてしまったの?」

 

その時、おいしゃさんが大きな深呼吸をしてから、言いました。

おいしゃさん「ふーっ、もう、大丈夫だよ。」

母たぬき「あ、ありがとうございます」

みんなは、ぽん太にかけよりました。

おいしゃさん「ぽん太が倒れたのは、急性アルコール中毒っていうんだ。大人はよくても子どもが飲んだらいけない、っていうには、きちんと理由があるんだよ」

母たぬき「からだが小さいから?」

くまきち「おいらは、おっきいから、いいのかなー」

和尚さん「大きさじゃないよ。成長の途中だってことじゃ。」

おいしゃさん「そう、一見大人と同じに見える中学生や、高校生だって、まだまだ身体の中は未完成。アルコールを分解する肝臓ってのが、よくはたらかないから、長い間身体の中で毒として働くんだ。」

和尚さん「顔が赤くなって、胸がどきどきして、足がフラフラして、気持ち悪くなって吐いてしまったり・・・」

おいしゃさん「そう、お酒の毒がまわるとなるんだよ。でも、ぽん太みたいに、ひどいときには、意識がなくなって、息ができなくなることさえある。吐いたものをのどに詰まらせて、死んでしまうことだってめずらしくないんだよ。」

母たぬき「くまきちくんのおかげで、早くおいしゃさんに診てもらったから、助かったのね。ありがとう、くまきちくん」

くまきちは、照れて、あたまをポリポリかきました。

おいしゃさん「そうそう、そこだよ、くまきち、そこが一番大事なところなんだよ。」

くまきち「あれれ?あ・た・ま?」

おいしゃさん「そう。頭の中にある一番大事なところ。」

母たぬき「脳ね。」

おいしゃさん「そう、脳への影響だ。大人になる前にお酒を飲み始めると、勉強ができなくなったり、集中力や、記憶力がわるくなるし、心の病気にもなりやすくなるんだよ。」

くまきち「心の病気?」

おいしゃさん「アルコール依存症って言うんだ。早くお酒を飲み始めるほと、短い間でアルコール依存症になるんだ。いつもお酒を飲まずにはいられなくなって、一生苦しまなくてはならなくなるんだよ。」

 

ぽん太「う、うーん」

母たぬき「ぽん太!気がついたのね。よかったー」

ぽん太「ここはどこ?おいら、なんでここにいるのかなー、」

おいしゃさん「気がついたようだな。もう大丈夫だ。おしょうさん、後はたのんだよ」

和尚さん「ありがとう、ぽん太を助けてくれて」

 

お母さんはぽん太をぎゅーっと抱きしめました。

母たぬき「ぽん太、よかったわ。もうお酒なんて飲まないでね。」

それを見て、くまきちはうらやましくなって、おしょうさんにぎゅーっと抱きつきました。

くまきち「おいらも、大人になるまで飲まないからね、和尚さん」

和尚さん「おいおい、くまきち、おおきくなったなー。」

和尚さんは、手をいっぱいに広げてくまきちを抱きしめてやりました。

それから、お寺の境内には、「お酒、おことわり」と、書くことにしました、とさ。

 (おしまい)

※タイトルはまだ付けてないらしく、筆者が仮に付けておきました。

つい先日のことですが、県立高校で養護教諭をしている10数年来の友人からメールが届きました。時々、近況を知らせてくれるので、彼女の活躍ぶりは知っていましたが、今回の便りに接して、ますます円熟を増してきただけでなく、教育的にも社会的にも意義ある活動のように感じられましたので、ご本人の了解を得て、本欄に紹介します。なお、添付されていた創作紙芝居は、ストーりーが先にできたようなので、次号にてその「物語」を紹介しようと思います。

 

真栄城先生へ

 

おはようございます。

明日は卒業式。卒業生の顔を眺めながら、月日の流れの早さをしみじみ感じています。

 

さて、本校の保健委員会では、今年度、未成年喫煙をテーマにドキュメンタリー風の映画を制作しました。その映画の中で、取材に行ったり、研究をした結果、自分たちにもできることはないかと考える。自分たちも学んだことを活かして紙芝居を作ろう、子どもたちにずっと無煙でいてもらいたいから!と、創作紙芝居を作りました。

実際、保育園や小学校の学童保育所に行って、読み聞かせをしています。

 

来年度、今度はアルコールで創作紙芝居を作りたい、と動き始めています。

というのも、自治体のイベントに喫煙防止の紙芝居の読み聞かせをする予定で、

約10分の紙芝居のあと、キツネとウサギが着ぐるみと、大きめの人形になって、子どもたちに呼びかけますが、もう1作、アルコールをテーマに作ったら、時間的にも見応えあるよね、って。

 

未成年者飲酒防止のための紙芝居を調べていったら、一つも見つけられませんでした。

未成年喫煙防止の紙芝居は、たくさんあるのに、子どもを対象とするなら、喫煙以上にあってもおかしくないと思うのですが。

 

生徒の紙芝居はすごく好評で、すでに全国のあちこちで、学校以外でも利用していただいていますが、これにつづいて、未成年者飲酒防止の紙芝居を作って、あちこちに発信しようと思います。

 

お話だけ先にできましたので添付します。

対象は小学校低学年のつもりです。率直なご感想をいただけるとうれしいです。

 

では、また。

                            M,K(愛知県立KN高等学校)