2012年4月アーカイブ

真栄城 輝明

 

(奈良女子大学)

【問題の提起】

内観の国際化にあたって考慮すべきことと言えば,文化差の問題であろう。内観の治療構造には独特なものがあり,日本文化で生まれた小道具が使われている。たとえば,畳,屏風,座布団,襖あるいは障子,お膳などである。が,それは果たして内観に欠くことのできないものといえるのか,国際化にあたってすぐに直面する問題であろう。たとえば,外国から内観に来た場合,正座の姿勢に抵抗を示すことが少なくない。実際,中国からの内観者を迎えたとき,膝を崩してもらって面接したことがある。ときには椅子を持ち込んでの面接になることもある。ヨーロッパでは衝立を屏風代わりにしているようである。また,内観の内容について,たとえば,対象人物を選定する際,日本では,まず母親が優先されることが多い。けれども,かつて,ドイツを訪問したとき,マールブルグ大学のブランケンブルグ教授が私的な会話の中で「ドイツ人の内観では,まず父親が重要なので先に調べたほうが良いかもしれません」と語ったことが印象に残っているが,中国でも,とりわけ上海からきた内観者は,母親よりも父親の手料理のほうが美味しいだけでなく,幼少時にお世話になったと報告することが少なくない。最近,日本でも家事をする父親も増えているようであるが,まだまだ彼国の比ではないだろう。

「自己」とか「自我」という言葉の文化差についても考慮しておく必要があろう。それらの言葉は,哲学や心理学でもはっきり定義されているわけでなくどこか曖昧さを残しているが,ここではとりあえず「私」や「自分」という言葉と近似的に用いることにする。たとえば,欧米で生まれた心理療法は,「自己実現」をセラピーの目的とすることが多い。一方,日本で生まれた内観療法は「我の滅却」を目的にしている。つまり,表現を変えれば,前者は「自己」を世界の中で表現,主張することをめざしているとするならば,後者では「自我」を消していくことに価値を置いていることになる。このことはひょっとして,日本ではいじめられた子どもが自殺してしまうこととして表れ,逆にアメリカではいじめられた子どもが「自己」を抑えつける者に対して,銃を持ち出してでも戦い,相手を殺してしまうことにつながっているのかも知れない。また,上海で開催された国際シンポジウムで話題になったことであるが,「日本人は,相手の期待に沿えないときにうつ状態になるケースが多いが,中国人は,逆に,相手が自分を理解してくれないと思ったとき,うつ状態になるケースが多い」という現象にも「自己」や「自我」をめぐる文化差が表れているように思われる。

実際,ある中国人留学生が日本滞在中に内観を体験した後のことであるが,「内観したことで,日本人との関係がうまくいくようになりました」と言って喜んでいた。ところが,「それからすぐに休暇を利用して短期間の里帰りをしたんですが,今度は中国人との関係がうまくいかなくなりました」と嘆いて見せたことがある。日本では「すみません」という言葉は人間関係の潤滑油になるが,中国では不用意に「対不起」という言葉を発すると自分の立場を危うくするというのである。中国人にとって「罪悪感」というテーマは、単純ではなく、慎重に取り組まなければならないといわれる。そうなると、内観のテーマも文化によって変えていく必要があるかもしれない。当日は、問題の提起者から各シンポジストに対する質問を準備しており、それに応えてもらうという形のシンポジウムを計画している。

15回日本内観医学大会が東邦大学で開催されますが、それと同時に国際内観シンポジウムが行われることになりました。シンポジウムの内容が決まったようなので、本欄にて紹介することにしました。次回には、問題提起者の抄録原稿を紹介する予定です。

 

それぞれの国と立場と分野から内観の本質と行方を考える

 

日時:1020日(土)

会場:東邦大学医学部(東京)

 

 座長

 久保千春(日本内観医学会理事長・九州大学病院院長)

 巽 信夫(前・日本内観学会理事長・いのちの森クリニック院長)

 

 コーデイネイター(問題提起者)

 真栄城輝明(奈良女子大学教授・大和内観研修所前所長)

 

シンポジスト(回答者)

 王 祖承(中国・上海交通大学医学院教授・中国内観療法学会顧問)

 Andrew  Lee (韓国内観学会会長・心理学博士)

 木村慧心 (米子内観研修所所長・日本ヨーガ学会理事長)

 小澤寛樹(長崎大学医学部教授・WHO日本側委員)

 

【内容と進行の手順】

1, コーディネイター(真栄城)から4人のシンポジストに前もって質問を送る。

2, 当日は質問の内容をパワーポイントで参加者に見せつつ、発言する。

3, 4人のシンポジストには、パワーポイントを使って、回答を講演していただく。

4, それぞれの発言内容は、前もってお互いに共有しておく。それをもとに当日はシンポジスト同士の討論を一定時間行う。

5, その後、フロアーからの質問を受けてそれに応える。

 

前回掲載した中国語の内観体験記を中国からの留学生で、私のゼミに所属している徐麗麗さんが日本語に訳してくれましたので、本欄にて紹介します。

 

       中国淮阴師範学院心理相談センター 于玲玲

 

日本から帰ってきたその日の夜のことです。空港に迎えにきてくれた夫とよく打ち合わせてなかったので、帰りの時間が手間取ってしまい、夫に叱られてしまいました。

しかし、これまでの私であれば、すぐに言い訳をしていたかも知れませんが、今回は黙ってベランダに行って静かに座っていました。ほんの束の間ではありますが、私は自分の行為を振り返り、自分の非に気づき、言葉を失っていました。私は内観をしていたのです。これまでの私は大雑把な性格で、いつもあちこちに物を置きっぱなしで、パソコンのファイルもめちゃくちゃで、夫は私に「あんたは一生の三分の一の時間を、物探しに使っている」と言われていました。

ところが、日本から戻ってきて2年が経った現在の私は、たとえば、同僚から内観の資料を求められたとき、あるいは大和内観研修所の電子メールを求められたときには、すぐに取り出せる自分になっていることに気づき、この変化に自分でも驚いています。

実際、私はいまでも内観に関する資料をすべてきちんと整理して持っていますが、それは真栄城先生から送って頂いた大きな封筒にしまっているのです。その封筒は、いまなお大切に保存してあります。

他にも内観後の変化と言えば、日本から帰って来て半年ぐらいの間は、スーパーで日常生活用品を買う以外に、デパートにほとんど行かなくなりました。以前のように必要以上には服も買わなくなりました。以前は玉製の工芸品やアクセサリが好きで、よく買いに出かけたものですが、ほとんど興味がなくなり、行かなくなりました。買い物依存の傾向がなくなり、家族の人に私はごみを製造しなくなったと言われています。私のこの変化について息子に話したところ、かれはこう言いました。

「お母さんの心が乱れているとき、家の中の環境もめちゃくちゃになっていた。それはきっと自分の心を落ちつけるためにしていたんだと思うが、いま現在、お母さんの心が落ち着いているので、家の中の環境を乱す必要がなくなった。」

なるほど、確かに日本で内観を受けて以来、心が落ち着いていますが、私の変化は内観によってもたらされたものだと思います。ホントに嬉しいです。

内観は私にたくさんのうれしい変化をもたらしてくれました。内観の効果は、時間の経過とともに消えていくと言われていますが、内観で素晴らしい体験をしたことと、その後に変化が訪れたことは、確かなことです。私自身は、自分の人生に対する信頼が増えました。焦燥感に襲われたとき、混乱した心をどのように浄化するのかと考えるとき、私は内観三日目に全ての症状が消えて気が楽になり、快適な思いをしたことを思い出すことにしています。内観後に私の両手から腫れが消えたことを思い出すことで、私の心は落ち着きを取り戻しています。いま私は、時々考えている。

「現在の状態は自分の思うようにはいかないこともあるが、私はまた日本に行くことができるし、真栄城先生を中国に招待することもできます。実際、去年の夏休みに、真栄城先生が中国に来られて、講演をしてくれましたが、それは私に大きな驚喜と希望を与えてくれました。東洋文化にから生まれた内観療法を中国で広げることは難しいことではない。私は、私が勤めている心理相談センターで二つの集団療法室を主宰しているが、今後は内観を行うために改装する予定です。」

内観が終わったとき、内観の体験記を心理療法の同業者に知ってもらうために、書いてみたらどうですかと勧められました。私は自分の体験を知ってもらいたいという思いがあり、日本から帰ってきて、何回か書こうと思ったのですが、何を書いたらいいのか分からなくて、その感動、暖かさ、幸せ、喜び、敬服など心の中でもうもうと立ち込めて、味わい深いが言葉では表現できない状態が続いておりました。今回は、内観していた時の場面を思い出し、そこに身を置いてみると、体験したことが蘇ってきました。

   (翻訳:奈良女子大学文学部4回生 徐麗麗)

 

当研修所で内観を体験した中国のカウンセラーから体験談がe-mailで送られてきました。日本語訳は次回に掲載することにしますが、今回は送られてきた中国語の原稿を原文のまま掲載したいと思います。欧米語と違って同じ漢字の国なので、何となく意味が伝わるところもあるのではないでしょうか。

 

于玲玲

(中国 淮阴范学院心理咨中心)

 

 

从日本内回来的第一天天晚上,因接机没接好,路上耽时间,先生批我,我没有像去一和他嘴,而是一言不地跑到阳台上腿坐下,很安静地呆着。了几秒,我意到自己的行然失笑:内观结束了!

我平很粗心,常常乱扔西,自己的电脑里,文件也很凌乱,先生曾夸我一子三分之一的时间都花在找西上了,但从日本回来已快二年了,当有同事想了解内料,想找大和内所的E-mail,我发现我居然把所有内有关的料整理得特,很妥地收在一个真荣寄文件来的大信封里,而那个信封,也保存得很干

我从日本回来后有半年时间,除了去超市购买一些生活必需品,几乎没有去过综物中心,没有添置衣服,也没有去以前特别钟爱的玉器市品店,家人我停止家里制造垃圾了。我和孩子化,他:当你的心里太乱,你向放混乱来求得内心的宁静,在,当你的内心宁静了,你也就不需要向放混乱啦。原来,我的化是内观带给我的,这让我非常欣喜。

观给来的很多人欣慰的体,随着时间的消逝而消逝了,但是,那些美好的感受和的可能性的确认让自己的人生增加了很多信任。当我的内心体到焦虑时,我知道怎做会解我的焦,当我的内心生一些纠结时,我知道怎做会自己的心灵得到化,......甚至我的双手再一次有肿涨的感觉时,我知道我曾在内的第三天它消失了所有的症状、松舒适。些回忆让一切感到踏,我有会想:尽管我在的状并不如人意,但我可以再去日本呀,我也可以把老师请到国内啊。去年暑假,真荣来中国,我很大的惊喜和希望:基于方文化背景下的内观疗法在中国推广,真得并不那么!我在我的心理咨中心装修,二个体活室特意选择包,的是以后方便做内

观结,老曾嘱咐有想和同道交流的想法可以写出来与他人分享,从日本回来后,多次想写,可不知什么好,那些淡淡的感、温暖、幸福、喜悦和佩在心、漫延,耐人味又以言!好像有些美好的西,当我用言去描述会感觉苍白,只有身其境,全神投入地感受个中滋味,才能属于自己的独特体