2015年8月アーカイブ

38回日本内観学会大阪大会

 

「心理臨床から学ぶ良い人間関係や環境の作り方」をお聴きして

          

 奈良女子大学大学院  北野留美

 

 第38回日本内観学会大阪大会に参加して、東豊先生の講演「心理臨床から学ぶ良い人間関係や環境の作り方」を拝聴しました。

東豊先生のご講演は、わかりやすい言葉で、事例のご紹介をしていただきました。カウンセリングの中で、まるで先生が魔法でもおかけになっていらっしゃるのではないかと思われるような変化がクライエントに起こっていることに驚き、お話に聞き入ってしまいました。先生の行っておられるカウンセリングは、問題や症状の原因を究明して解消しようとするものではなく、その問題を継続している仕組みを変えようとするものです。過去の在り方ではなく、現在のあり方を問題にするとお話し下さいました。先生ご自身、「三界は唯心の所現(涅槃経)」(身の回りに起きることはすべて自分の心が作ったものである)というお釈迦様のお言葉を深く信じておられることに起因していると思われます。心に想うそのままが現実として現れるので、クライエントの思いと言葉、コミユニケーションに特別の注意を払い、それらに影響を与えられるように配慮されているとのことでした。

まず初めに、万引き少年の事例をご紹介いただきました。実際、先生のカウンセリングの中で、Clの少年に対して、「君ほどの人が、なんでまた万引きなんかやるの?」という言葉かけをされており、そこには、「君は万引きなんかやる人間ではない」との強いメッセージが込められていました。一方母親は、「この子は今に悪いことをするに違いない」とびくびくしており、その様子から、「お母さんの思い通りに悪いことが出来るようになるのです。」と、「お母さんの想いのパワーは絶大である」ことを話されていました。

そこで「P循環・N循環」のお話が出てまいります。クライエントからセラピストに表出してくる、困ったことや悩み、怒り、恨みなどを、N(ネガテイブ)要素といい、これは、個人の内部で循環してクライエントの心と身体にダメージを与えます。それを心身交互作用と言います。それには、個人内N循環と対人N循環があり、クライエントと命名された人は、個人内的にも対人的にも、「N循環」の渦の中にいる人であると考えることが出来るので、個人が問題なのではなく、「N循環」が問題なのであり、どうやったら「N循環」の渦から「P循環(ポジティヴ)」の渦へ変えることが出来るかを考えるのが大切だと話されました。

次の事例では、「N循環」→「P循環」へ変えるツールとして、お祈りの言葉が登場しました。宿題をしない長男とともに来談した母親に「私は太郎を許しました。太郎も私を許しました。ありがとうございました。太郎はとても良い子です。益々よくなっていきます。ありがとうございました。」と、毎日唱えてみるように提案され、カウンセリングでも、上手くいかなかったことよりも、上手く行ったことを長い時間聴くようにされました。すると、お祈りによって母親の心の中にP要素が膨らみ、母親の不安やイライラが落ち着き、その雰囲気が周囲に良い影響を与え、母親の子どもへの関わり方が変わり、そうすると子どもが変化するのです。母親こそが自分の中でP循環をつくり、子どもとの間で対人P循環をつくることが大切とのことでした。「母親」を「セラピスト」に置き換えても同じことが言えるのではないでしょうか。一人の母親としても、セラピストの卵としても大変勉強になるお話でした。そして過去の事実は変わらなくとも、その捉え方を変化させ、P循環をつくっていくという考え方は、内観に通ずるものがあると感じました。恨みや怒りのN循環の渦の中にある人が、内観3項目に従って過去の事実を想起することにより、その渦を個人内P循環、対人P循環の渦へと変えることができると思います。

先生の講演を伺っていると、会場全体が温かく明るい雰囲気に包まれていくように感じ、私自身もとても幸せな気持ちになっているのに気が付きました。知らず知らず、先生のP循環の渦の中に入ってしまったのでしょう。

これからも、先生が書かれた書籍を積極的に読ませていただき、学び、実践したいと思います。本当にありがとうございました。

2015年10月

        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

カテゴリ