愛の心理学

| コメント(0) | トラックバック(0)

「愛とは何か?」

私が依拠する心理学は、真正面から「愛」について取り上げた研究は乏しいと言わざるを得ない。その中でもM,スコット・ペックの「愛と心理療法」(氏原寛他訳 創元社)は、数少ない心理学書と言ってよいだろう。本文は、その書を参考にしつつ、人間にとって最も大切な「愛」について述べてみたい。その前に、一般には「愛」がどのように考えられているかを見るために広辞苑を開いてみた。それには、六項目にわたる「愛」が紹介されている。

①いとしく思う(心)。(対義語)憎。

②かわいがる。いつくしむ。かわいい。「なんじの敵を愛せよ」「愛憎・愛児・博愛・寵愛ちょうあい・母性愛」

③異性を恋しく思う。「愛する人」「恋愛・求愛」

④めでる。すきこのむ。「酒を愛する」「愛好・愛唱歌・愛読」

⑤大切に思う。おしむ。「祖国を愛する」「愛郷心・愛護・愛惜・自愛・割愛」

⑥〔仏〕執着する。「愛着・愛染あいぜん・渇愛」

アメリカの精神科医・スコット先生は、「愛の定義」という章で、「愛について考えることは、触れることのできぬ不可思議なものを弄ぶようなものであることは、十分承知している。」「愛はあまりにも大きく深いので、言葉の枠組みでは、本当に理解したり測ったり限定したりすることができない。」としたうえで、次のように定義して見せている。

 「愛とは、自分自身あるいは他者の精神的成長を培うために、自己を拡げようとする意志である。」

 彼はこの定義を精神科臨床における実際の観察(自己観察も含めて)を通して到達したというだけあって、実際に悩んでいる人には参考になる。

 昨年の二〇一五年十一月一日のことであるが、私は竹その家族に招かれて人間関係について講演する機会があった。講演に先立って家族会のメンバーからいくつかの質問が寄せられた。その中の一つに次のような質問があった。子に対する母親の愛を考えさせる内容であった。

 「私は、息子が酒害者なので 親が協力者の場合の話もお聞きしたいです。うちの場合、五年かかってやっと少し仕事が出来る様になってきましたが、本当に飲んでる時 大変で 飲む為には暴力も平気でしたし、引きこもってまして 断酒後もとても回復が遅いと思ってますが 最近 一人行動が増えてきて、ちょっと出掛けてくると言って夜 遅くなったりすると とても心配です。親子の場合、いつまでも一緒ってわけにはいかないと思いますが、 息子はメールをよくしていて、メル友とかと会ってないかと不安です。息子を信じなくては と思うのですが 何処へ行くのかも言いません。どう対応したらよいか 宜しくお願いします。」

 スコット先生の著書に「臆病な青年」の例が紹介されている。

「おふくろは私をとても愛していたので、高校三年になるまで、スクールバスに乗せてくれなかったんですよ。その時でもずいぶん頼み込まなければなりませんでした。怪我でもしたら大変だと思ったのでしょう。毎日、母親が送り迎えをしてくれたんです。彼女も大変だったんですが、本当に私を愛してくれたんですね。」と患者の青年が話したとき、スコット先生は、愛と思われたいたものがしばしばとても愛とは呼べないことがあるので、それを患者に教えなければならいとして、青年に愛についての講義をしている。おそらく、母親の「共依存」という病的話焼きについて話したのかもしれない。

スコット先生の愛の定義によれば、「愛」とは、相手だけでなく自分自身を向上させる行為でなければならない。つまり、愛は他者への愛と同時に自己愛が含まれており、相手だけでなく自分自身をも愛することである。したがって、相手(息子)の成長だけでなく、同時に自分も成長につながる必要があるというのだ。

なぜならば、母親自身に自律性がなくては子どもに自律性を教えることはできないからだとスコット先生は言う。私もこれまでの心理臨床を振り返って全く同感である。

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://yamato-mahoroba.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/673

コメントする

2016年2月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29          

カテゴリ